フランクフルト進出案内

フランクフルト / Frankfurt am Main について、現地法人設立や起業の観点からご説明します。

金融都市として有名ですが、ドイツ一番の空港もあり地理的に欧州・ドイツの中ほどにあることから、交通の便が非常によいのが魅力です。また、外国人の比率が非常に高いこともあり、外国企業の入りやすい利点もあります。

ちなみに Frankfurt am Main の “am Main” は「マイン川のほとりの」という意味。ベルリンから更に東のポートランド国境には、Frankfurt an der Oder という「オーダー川のほとりの」別のフランクフルト市があります。

目次

1)フランクフルトの産業(金融と空港、そして製造業)
2)フランクフルトの人口(高い外国人比率)
3)フランクフルトの空港(街から15分のハブ空港)
4)フランクフルトの事業税
5)日系企業のオフィス立地

1)フランクフルトの産業

フランクフルトの主要インフラ

まず、フランクフルトの主要インフラから見ていきます。

  • フランクフルト空港
  • メッセ・フランクフルト(世界一のブックメッセ、世界一の日用品見本市 Ambiente など)
  • ECB(ヨーロッパ中央銀行)、ドイツ連邦銀行

金融

上記3つ目にヨーロッパとドイツの中央銀行がそれぞれ挙がっています。たしかに、フランクフルトと言えば金融都市。

「アルプスの少女ハイジ」のハイジが過ごした都会の家は、フランクフルトでした。クララのお父さんは銀行家という設定だったと言われています。また、ユダヤの金融一族として、いまだに赤ワインの「シャトー・ムートン・ロートシルト」「シャトー・ラフィット・ロートシルト」で名が残るロスチャイルド家もフランクフルト発祥です(Rotschild ロートシルト = ドイツ語で赤い盾)。

現在でも、ドイツ銀行(ドイチェバンク)、コメルツ銀行はじめ大手銀行や外資系金融機関の拠点も多くはフランクフルトにあります。また、Brexit によって、ロンドンから欧州大陸への機能移転も多くはフランクフルトに移ったものと言われています(一部でアムステルダムやパリを選んだ銀行・会社もあります)。

邦銀の場合は、日本人人口がドイツ最大であるデュッセルドルフにより比重が高いようですが、それでもメガバンク各行の拠点と、証券会社や保険会社はフランクフルトにあります。

運輸

しかし、商工会議所 (IHK) の統計を見ると、2020年6月のフランクフルトと郊外での雇用人数は、金融機関の93,000人に対して、運輸倉庫業が92,000人とほぼ同数。また製造業も60,000人と相当数います。

主要空港があることから分かるように、運輸倉庫業すなわちロジスティクス系の企業が多いこともフランクフルトの特徴です。フランクフルト空港自体が Fraport AG という巨大企業であるほか、ナショナルフラッグキャリアーであるルフトハンザドイツ航空がやはりフランクフルトの大企業です(意外にも本社はケルンにあるようですが)。

日系の航空会社はもちろん、運送会社やフォワーダー各社もフランクフルトを拠点にされています。

メーカー

また、先述のように製造業も大きなフランクフルトの産業です。自動車の部品関連の機械・電気メーカーと、薬品や化学系のメーカーが活躍しています。巨大企業としては Sanofi-Aventis があります。Sanofi はフランスの製薬会社ですが、Aventis は有名なヘキスト Höchst という化学会社から M&A を経てできた会社です。Höchst はフランクフルト西側で空港にも近い産業地域の地名でもあり、化学工場の煙突がたくさん見えます。

ところで、なぜ製造業もフランクフルトに多いのでしょうか? それは、北ドイツへも南ドイツへもアクサセスしやすいドイツ国内での中心的な立地に加え、ハブ空港からヨーロッパ・世界中にアクセスがし易い利点があるからです。交通の便のよさがフランクフルトの魅力です。

また、一つだけ労務的にセンシティブな情報をお伝えします。シュツットガルトミュンヘンは、ダイムラーやボッシュ、BMWにジーメンスとそれぞれ巨大製造業を擁し、こういった企業との取引のために現地法人を出す日系企業は数多くあります。ところが、これら南側の州はカトリックの影響で祝日の数が北側より4-5日多くなります(ドイツは祝日が州によって違います)。そのため、フルタイムの社員に同じ給与を支払っても、実働日数に違いが出てしまいます。

2)フランクフルトの人口

2019年の統計で76万人という数字になっています。これだけの知名度ですが、日本の地方中枢都市ぐらいの規模になっています。ただし、フランクフルト市よりもむしろ郊外で高級住宅地や産業エリアがありますので、「ラインマイン地域」では 240万人もの人口があると言われています。更に広域の「ラインマイン都市圏」では 570万とされています。

ドイツはどの都市も同じ傾向がありますので、この76万人の人口でもドイツ5番目の大きさとなっています。

フランクフルトの特徴は外国人比率が高いこと。2018年の統計で外国籍の市民の比率が29.6%にもなっています。また、51%もが「移民バックグラウンド」、すなわち本人ないしは両親の少なくとも一方が外国籍を持って生まれた市民になっています。

二重国籍や国籍の変更が珍しくないので、これをもって「ドイツ人より外人の方が多い都市だ」とまでは言えませんが、少なくとも周辺都市から就業者が集まる昼間の人口は外国人の方が多いと言われているのは間違いではないかもしれません。

外国人比率が高いということは、英語が通じやすいことでもあり、役所などでも外国人や外国企業の取り扱いに比較的慣れていることは利点です。

日本人の人口は、外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると、3000人弱になっています。しかし、上述のように周辺都市の人口が多いのは日本人にも当てはまり、フランクフルト総領事館のカバーされている3州の邦人が6000人という数字から類推しますと、上述のフランクフルト都市圏では5000人は居住があるのではないかと推測されます。

また、日本人学校には全日制と補習校の両方があり、インターナショナルスクールは主に3校(FIS, IFS, MFS)あります。

日本人法人会があり約200社の登録があるほか、ラインマイン友の会という互助組織があります。また、プライベートの異業種交流会は各種盛んに行われています。

また、夏には「マイン祭」という日本文化をテーマにしたお祭りが催され、数万人の日本ファンの来客を集めています。

3)フランクフルトの空港

先述のようにフランクフルトにはドイツで一番の空港 Flughafen(地図上左下)があります。欧州でも有数でして、コロナ下の時期を除けば、旅客数・運輸高・便数などで見て、ロンドン・ヒースロー、パリ・CDG、アムステルダム・スキポールと肩を並べる欧州を代表する空港です。

もちろん本数は豊富で、アメリカやアジアへのフライトも多く、日本との間の直行便も日本航空・全日空・ルフトハンザと揃っており、東京・大阪・中部の各空港への運行があります。(コロナウイルスの影響もありますので、逐次ご確認ください。ご参考: ウィキペディア「日本の空港から直行便のある都市一覧」

フランクフルトで空港と言えば、特筆すべきは街からの近さです。なんと市の中心地である Hauptwache から16分、フランクフルト中央駅からは12分で、ごく普通の電車(Sバーン)で行くことができます。15分に1本出ています。

タクシーでも道が空いていれば15-20分程度で着きますので(道のり12キロ)、人口80万人弱の都市ならではの身軽さです。

4)フランクフルトの事業税

事業税 / Gewerbesteuer とは、法人の利益への課税のうち市町村から課される部分で、各自治体ごとに異なる料率をかけます。一方、国と州から課されるのは法人税 / Körperschaftsteuer といって一律 15%ですが、その課税額に対し 5.5% の連帯付加税 / Solidaritätszuschlag(東ドイツなどの復興納税)が加わりますので、実質 15.825% となります。

事業税の計算の仕方は、3.5% のベースレート / Steuermessbetrag があって、それに市町村ごとの掛け目 / Hebesatz を掛けます。一般には 400% ぐらいの掛け目が一般なので(レンジは200-900%)、3.5% x 400% = 14% の事業税ということになります。

これに先の法人税 約15.8%と合わせますと、約29.8% ということになります。

さて、フランクフルトの掛け目ですが、410%とドイツの主要都市の中では最も低くなっています。上記と同様に計算しますと、事業税が 14.35% で、法人税 約15.8%と合わせて約30.2% になります。

また一方で、フランクフルトの近郊にはエシュボルン / Eschborn という低税率で企業誘致に成功した街があります。そちらの掛け目は 330% ですので、計算すると約27.4% になります。

ただし、事業税の対象となる自治体は、単にの本拠地というだけでは決まりません。売上の上がった場所、従業員数の拠点ごとの分布など、いくつかのファクターで総合的に求められます。具体的な計算や税務署への報告には日本人税理士を紹介しております。

5)日系企業現地法人のオフィス立地

ほとんどの日系企業の現地法人は、太線内のフランクフルト中心部にオフィスを構えています。

しかし、事業税のところで触れたエシュボルン / Eschborn(フランクフルトから北西)、次いで空港と周辺の諸都市(フランクフルトから南西)も、製造業を中心に日系企業が複数社集まっています。いずれもフランクフルト市内からは、自動車でアウトバーンを走ってか電車(Sバーン)かで、15分から30分程度の距離になります。コンパクトで交通の便がよいのが、この地区の特徴です。

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