ハンブルグ進出案内

ハンブルク / Hamburg について、現地法人設立や起業の観点からご説明します。

アルスター湖に面した市街地が美しく、海とも見紛う広大なエルベ川に面した港町です(実は海には面していません!)。ヨーロッパの北海方面の港として、ロッテルダム(オランダ)、アントワープ(ベルギー)に並ぶ海運業の要所になっています。

歴史的に「ハンザ同盟」で知られる自由商業都市で独立気質が高く、マスコミ・メディア産業の都でもあります。Google のドイツ拠点がハンブルクであるというのもうなずけます。

ドイツにしてはエンターテインメント産業も盛んで、ニューヨークとロンドンにははるか及ばないものの、常時大型の公演が行われている意外なミュージカルのメッカです。また、歓楽街のレーパーバーン / Reeperbahn は、少し怪しい観光地であるほか、あのビートルズが開花した場所として有名です。

目次

1)ハンブルクの産業
2)ハンブルクの人口
3)ハンブルクの空港
4)ハンブルクの事業税
5)日系企業のオフィス立地

1)ハンブルクの産業

ハンブルクの主要産業は、港湾都市だけあって運輸物流(いわゆるロジスティクス)関連産業がもっとも代表的です。それに次いで、小売やマスコミの存在感も大きく、文化的に開けた土地柄が想起されます。

ハンブルクの雇用人数別・大企業ランキング

  1. Tchibo GmbH(MUJI をもっと普通にしたような小売チェーン)
  2. Hapag-Lloyd AG(海運)
  3. Fielmann AG(メガネ・光学)
  4. Lufthansa Technik AG(空運)
  5. HGV(港湾運営。市の子会社)

6位以降は持ち分の関係などもあって入り組みますが、上記の Tchibo のほかにも、大手スーパーチェーンの EDEKA と通販チェーンの Otto もハンブルク本拠の大企業です。

ニベア / NIVEA で有名な(そもそもニベアがドイツのものということが知られていないかもしれませんが) Beiersdorf AG もハンブルクの会社です。

マスコミ・出版大手の Axel Springer AG や高級週刊誌 Der Spiegel の本社もハンブルクにあります。

2)ハンブルクの人口

ハンブルクはドイツで2番目に人口の多い都市です。直近の統計では人口 190万人になり、EU 圏内の首都以外では最も大きな都市になるそうです。リューベック Lübeck、シュベーリン / Schwerin など周辺都市を加えた「ハンブルグ都市圏」では 320万人となっています。

ドイツの主要都市の中では、都市圏としての周辺人口は最も少なく、それだけハンブルク市内が充実していると言えます。事実、東京のようにある程度の大きさの繁華街が複数あるのは、ドイツではベルリンとハンブルクだけです。人口3位のミュンヘン以下では、市中心部にほとんど全てが集中している傾向があります。

外国人人口は意外に少なく、直近の数字で 17%とドイツ主要都市の中では最も低くなっています。同じく「移民バックグラウンド市民」(本人ないしは両親の少なくとも一方が外国籍を持って生まれた市民)も 34% と最低水準です。トルコ人、ついでポーランド人が多いというのは通常通りですが、ついでアフガニスタン人やセルビア系の人が多いのが特徴的です。

日本人の人口については、外務省の「海外在留法人数調査統計」によれば、ハンブルク総領事館管轄の 4州に 5000人近く邦人が登録されているそうです。この 4州にはブレーメン / Bremen やフォルクスワーゲンのお膝元のニーダーザクセン / Niedersachsen が入っていますので、3000人ぐらいはハンブルクとその周辺に居住していると考えてよさそうです。

日本人学校はハルステンベック / Halstenbek という北西の郊外の街にあり、全日制・補習校ともに幼稚部から揃っています。インターナショナルスクールも市内西部に一校あります。

主な日本人の組織には先述のハンブルク日本人会がありますほか、ハンブルク独日協会もあります。

3)ハンブルクの空港

ハンブルクの空港は、古くからの歴史はあるものの、現在の規模はドイツで5番目とされています。空運の中心はフランクフルトであって、ハンブルクはあくまで海運の中心地だという位置づけです。

中心地から北に10キロ超の場所にあります。車では道路状況にもよりますが 20-30分、電車では Sバーン (S1) で30分になります。

飛んでいる便は、ほとんどが欧州域内となります。日本への直行便はなく、日本へ飛ぶにはフランクフルト、ロンドン、パリ、アムステルダム、イスタンブールなどで乗り換える形になります。

4)ハンブルクの事業税

事業税 / Gewerbesteuer とは、法人の利益への課税のうち市町村から課される部分で、各自治体ごとに異なる料率をかけます。一方、国と州から課されるのは法人税 /  Körperschaftsteuer といって一律 15%ですが、その課税額に対し 5.5% の連帯付加税 /  Solidaritätszuschlag(東ドイツなどの復興納税)が加わりますので、実質 15.825% となります。

事業税の計算の仕方は、3.5% のベースレート / Steuermessbetrag があって、それに市町村ごとの掛け目 / Hebesatz を掛けます。一般には 400% ぐらいの掛け目が一般なので(レンジは200-900%)、3.5% x 400% = 14% の事業税ということになります。

これに先の法人税 約15.8% と合わせますと、約29.8% ということになります。

さて、ハンブルクの掛け目ですが、470%とドイツの主要都市の中でも高めです。上記と同様に計算しますと、事業税が 16.45% で、法人税 約15.8% と合わせて約32.3% になります。

周辺都市では中には優遇的な事業税率を設定しているところもありますが、ハンブルクの場合は他のドイツ主要都市と違ってほとんど全ての機能がハンブルク市内に揃っているため、市外に拠点を置く企業は少なくなっています。

またいずれにせよ、事業税の対象となる自治体は、単に本拠地というだけでは決まりません。売上の上がった場所、従業員数の拠点ごとの分布など、いくつかのファクターで総合的に求められます。具体的な計算や税務署への報告には日本人税理士を紹介しております。

5)日系企業のオフィス立地

日系企業のオフィス立地ですが、ハンブルクの場合はあまり目立った傾向はありません。強いて言えば、市北部の空港周辺(上の青い円)、それから市東部のハム / Hamm などの産業地域(右の青い円)のエリアになります。

なお、左の赤い円が、先述の日本人学校のあるハルステンベック / Halstenbek になります。S3 沿線ですが近年は住宅難のため、路線沿いで住居を見つけるのは難しくなってきています。

ベルリン進出案内

ベルリン / Berlin について、現地法人設立や起業の観点からご説明します。

言わずと知れた首都で、人口はドイツ第一ですが、東西統一の前の影響は色濃く残っています。日本でのイメージとは違うかもしれませんが、実は物価が安く、所得レベルも低めです。

むしろベルリンの魅力は、ドイツの他の都市にはない自由でクリエイティブな空気。昔はテクノ音楽の都。現在ではベンチャーやアーティストが集まる街です。大企業よりも起業やフリーランスのビジネスに向いていると言えるでしょう。

目次

1)ベルリンの産業
2)ベルリンの人口
3)ベルリンの空港
4)ベルリンの事業税
5)日系企業のオフィス立地

1)ベルリンの産業

ベルリンの主要産業は、首都のため公益性の高いものになります。

ベルリンの雇用人数別・大企業ランキング

  1. Deutsche Bahn AG(ドイツ鉄道)
  2. Berliner Charité(医大)
  3. Klinikgruppe Vivantes(市立病院)
  4. BVG(ベルリン公共交通)
  5. Siemens AG(ミュンヘン本拠の重電メーカー)
  6. EDEKA(ハンブルク本拠のスーパーチェーン)
  7. Daimler AG(シュツットガルト本拠の自動車メーカー)
  8. Deutsche Post DHL(ドイチェポスト・郵便)
  9. Deutsche Telekom(ドイチェテレコム・通信)
  10. WISAG Gruppe(フランクフルト本拠の空港オペレーター)

「地方分権国家ドイツ」らしく、首都ベルリンは政治と観光の機能が優れていますが、主要産業は他都市が担っています。たとえば、金融はフランクフルト、自動車はシュツットガルト、電機はミュンヘンといった形です。

日系企業については、ベルリン日本商工会さんがホームページで会員一覧を開示されています。連邦政府・議会がベルリンにあるためか、マスコミ関係の企業が多くなっています。

このようにあまり大きな産業はありませんが、ベルリンにはベンチャー企業が多く育つ特性があります。下の地図のように、年間トップ 50 にランクされるベンチャー企業の4年間の合計数は、ミュンヘンと並んでベルリンがドイツで一番という数字があります。

https://www.top50startups.de/

2)ベルリンの人口

ベルリンはドイツで最も人口の多い都市です。直近の統計では 360万人を超えています。ポツダム Potsdam など隣接都市を加えた「ベルリン生活圏」では 470万人、より広域な「ベルリン・ブランデンブルグ首都圏」では 620万人となっています。他のドイツの主要都市と違って、周辺人口の方の比率は低くなっています。

外国人人口は 20.9%とドイツ主要都市の中ではかなり低めです。同じく「移民バックグラウンド市民」(本人ないしは両親の少なくとも一方が外国籍を持って生まれた市民)も 35.7% とかなり低い方になっています。ベルリン南部や東部を中心にトルコ系移民が多い印象が強いですが、実は外国人が少なめという統計結果になります。

日本人の人口は、外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると 3,700 人となっていまして、周辺都市を含まなければ、デュッセルドルフミュンヘンに次いで3番目です(フランクフルトは市外に日本人人口が多い)。日本人学校の児童・生徒数や先述のベルリン日本商工会の会員数からしても、現場の実感としても、フリーランスや大学関連で現地で長く暮らしている方が多いと見られます。駐在は、主に外交官やジャーナリストの方々がおられます。

日本人学校は全日制のほか補習校が二校あります。補習校には幼稚部も用意されています。所在地はそれぞれ西ベルリンになります。インターナショナルスクールは、各国大使館が集まる首都だけあって、非常にたくさんあります。

主な日本人の組織には、ベルリン日本人商工会のほか、ベルリン日独センターなどがあります。

3)ベルリンの空港

ベルリンの空港は、新しいものが2020年に開港したばかりです。以前あった3つの空港が、1つに統合されました。建設工事が10年近く遅れ、工事費が当初予定の3倍にも上ったことが、非常に頻繁にニュースになっていた有名な空港です。なお、現在はターミナル 1, 2, 5 がありまして、ターミナル 3, 4 は2030年ごろのオープンになりそうです。

場所は、シェーンフェルト / Schönfeld という空港が以前よりあった場所で(同空港が現在のターミナル5 に当たる)、市街地からは南東に 30km ぐらい離れた場所です。

電車での移動は、30-50 分ぐらいです。ベルリンは広いので、どこからどう乗り継ぐかによって、所要時間は大きく違ってきます。

飛んでいる便は、ほとんどが欧州域内となります。日本への直行便はなく、日本へ飛ぶにはフランクフルト、ロンドン、パリ、アムステルダム、イスタンブールなどで乗り換える形になります。

4)ベルリンの事業税

事業税 / Gewerbesteuer とは、法人の利益への課税のうち市町村から課される部分で、各自治体ごとに異なる料率をかけます。一方、国と州から課されるのは法人税 / Körperschaftsteuer といって一律 15%ですが、その課税額に対し 5.5% の連帯付加税 / Solidaritätszuschlag(東ドイツなどの復興納税)が加わりますので、実質 15.825% となります。

事業税の計算の仕方は、3.5% のベースレート / Steuermessbetrag があって、それに市町村ごとの掛け目 / Hebesatz を掛けます。一般には 400% ぐらいの掛け目が一般なので(レンジは 200-900%)、3.5% x 400% = 14% の事業税ということになります。

これに先の法人税 約15.8% と合わせますと、約29.8% ということになります。

さて、ベルリンの掛け目ですが、410%とドイツの主要都市の中ではフランクフルトと並んで最も低くなっています。上記と同様に計算しますと、事業税が 14.35% で、法人税と合わせて約30.2% になります。

周辺都市(ブランデンブルグ州という別の州になります)では田舎に行くと 300% 台と掛け目の低い街も多いですが、同州州都のポツダム Potsdam では 455% とむしろ高くなっています。

いずれにせよ、事業税の対象となる自治体は、単に本拠地というだけでは決まりません。売上の上がった場所、従業員数の拠点ごとの分布など、いくつかのファクターで総合的に求められます。具体的な計算や税務署への報告には日本人税理士を紹介しております。

5)日系企業のオフィス立地

日系企業のオフィス立地ですが、そもそもベルリンには日系企業が少ないので、あまり一般化できません。

ただし、ソニーさんは中央駅から南に下った旧東西の間のエリア。ユニクロさんの旗艦店も旧西ベルリンの中心である、ツォー / Zoo(動物園)から西に向かうクーダム / Kurfürstendamm (Ku’damm) にあります。(地図上、左側の丸)

一方、ブランデンブルグ門 / Brandenburger Tor の周りには連邦議会 / Bundestag はじめ政治機能が集まります。そのため、地図上の右側の丸のエリアには、マスコミ関係や士業の方々のオフィスが多めになります。 

飲食店プレゼン資料づくり

はじめに(飲食店のプレゼンテーション資料・事業計画書はいつ必要か)

飲食店経営では、プレゼンテーション資料は事業計画書を用意しなくてはならないとき・用意した方がよいときがあります。それは一体どのようなときでしょうか。

ケース1)店舗物件賃貸のために貸主に対してプレゼンテーションすべきとき
ケース2)銀行融資を受けるときに銀行に対してプレゼンテーションすべきとき

以上の2ケースです。それぞれ内容は似ていますが、特に後者は難易度が高くなります。以下、具体的にご説明します。

ケース1)賃貸店舗物件取得のための貸主向け

賃貸契約のための資料は、提出義務があるわけではありませんが、希望の物件の借り手として選ばれるためには非常に重要です。経験上、有効な資料があるのとないのとでは、貸主審査の結果に大きな違いがあります。

なお、物件契約の流れや提出義務のある書類については、「ドイツ飲食店開業の手続き」をご参考になさってください。

さて、プレゼンテーションに最低限載せるべき事項は以下の通りです。

  1. コンセプト
  2. 主力商品(たとえばラーメンとは何か)
  3. 市場分析・競合分析
  4. 代表者プロフィール
  5. 収支計画

貸主の目線で考えますと、気になるのはまず周囲の飲食店と提供するものが重なっていないかです。同じ貸主が近くに数物件持っていることも珍しくないので、そもそものバッティングのあるコンセプトだと断られることが多くなります。また、場所柄と提供するものの相性も当然に考慮されます。

また、貸主は当然に安定した家賃収入を期待しますから、どれだけの収益性のある事業をするのか、代表者は信頼できる経歴のある人物なのかを知る必要があると考えます。

賃貸物件向けのプレゼンテーション資料は、パワーポイントで作成するのがよいでしょう。

もちろんプレゼンテーション資料だけで物件が取得できるわけではなく、上述のような周辺状況や SCHUFA などの信用情報が重要になってきます。

ケース2)融資を受けるための銀行向け

政府系銀行  KfW はじめ銀行融資を受けて起業する方も少なくないと思います。次はその場合の資料のポイントをご説明します。このときの資料は、ドイツ語でも Business Plan と英語で呼ばれます。

まず、ドイツでは重要度が高くオフィシャルな性格なものほど、文字でビッシリと書きます。したがって、賃貸物件向けの資料のようにパワーポイントで作るのではなく、Business Plan  の場合は文章部分はワードで書きます。

内容は賃貸物件向けのものと同じ構成でよいですが、内容はかなり膨らませます。少なくとも 20ページぐらいは目指したいので、商品説明では歴史から、代表者プロフィールでは職歴や技能を、みっちり書きます。

そして肝心なのは数字面(収支計画など)です。これはエクセルで作ります。以下の三種の財務諸表がこの分野での「お約束」です。

  • Kapitalbedarf(必要資金額)
  • Rentabilitätsplan(収益性計画・3年分が普通)
  • Liquiditätsplan(流動性計画・3年分が普通)

もちろん Business Plan だけで融資が下りるわけがなく、そもそもの事業の中身と SCHUFA などの信用情報が重要なのは言うまでもありません。

おわりに(プレゼンテーション資料作成上の注意事項)

最後にプレゼンテーション作成上の注意をお伝えしておきます。

ドイツ語はネイティブに訂正してもらうべきです。ドイツは文化的に保守的ですし、公式な言葉は(裁判も含めて)ドイツ語という法律があるように、公式なものになればなるほどドイツ語で行います。かつ、ネイティブの感覚で見ておかしなドイツ語ですと、正直なところ低く見られます。「B2 に受かった」ぐらいのドイツ語が少しできる方に限って、逆にこの社会文化的な深みを軽視してしまう傾向があるのでご注意いただきたいと思います。

英語は国際語なので多様性があって、きれいな英語でなくても受け入れられやすいですが、ドイツ語に同じ連想は当てはまりません。

では、英語で作成してもよいかと聞かれることがありますが、銀行はもちろん不動産物件の貸主でも法人であれば 3-4人は目を通すことになります。ドイツは英語が通じやすいとは言え、全員がドイツ語と同じ感覚で英語の書類を受け入れてくれるかというと、そうではありません。したがって、目的達成のためには効力が下がってしまうと思われます。

その他の注意点としましては、自らの事業をドイツ人に魅力的に伝えるポイント、簡易版でも損益計算書を作れる財務知識も必要です。当社ではプレゼンテーション資料作りの外注も承っていますので、ご関心ある場合にはお気軽にご相談ください。

デュッセルドルフ進出案内

デュッセルドルフ / Düsseldorf について、現地法人設立や起業の観点からご説明します。

ドイツでは日本人人口と企業数が最も多い都市です。ただし、ドイツ全体では小売やアパレルの印象が強い街です。また、北側にはいわゆるルール工業地帯が位置し、鉄鋼業や電力業の関連もあります。

目次

1)デュッセルドルフの産業
2)デュッセルドルフの人口
3)デュッセルドルフの空港
4)デュッセルドルフの事業税
5)日系企業のオフィス立地

1)デュッセルドルフの産業

デュッセルドルフの主要産業は、実は小売やアパレルです。その他では「ルール工業地帯」が近いため、鉄鋼や電力関連が目立ちます。

デュッセルドルフの雇用人数別・大企業ランキング

  1. デュッセルドルフ空港
  2. Rheinmetall AG(鉄鋼)
  3. Metro AG(小売)
  4. Mercedes Benz(自動車)
  5. Terex Corporation(建設機械)
  6. SMS Group GmbH(金属)
  7. E.ON SE(電力)

以上のように小売のほか、鉄鋼・電力関連が目立ちます。

なお、小売については、ドイツの代表的企業の本拠が集まっています。Metro AG はコストコのような国際的な会員制卸売・小売チェーンで、日本にも進出していました。また、同社からスピンオフした企業のうち、家電量販店最大手の SATURN と MediaMarkt を有する Ceconomy AG と、大型スーパーの Real GmbHは同じくデュッセルドルフ に本拠を残しています。(百貨店的業態の Galeria Kaufhof GmbH は Karstadt と合併してエッセン Essen が拠点)。

また、アパレル小売チェーンの Peek & Cloppenburg KG と、ファストファッションの先駆けだった C&A のドイツ本社も、デュッセルドルフにあります。

一方、日系企業については、重厚長大全盛の時代よりデュッセルドルフを拠点にする会社が多く、今日までその傾向が続いています。ドイツの他都市と違って、ドイツの現地企業との取引のためというよりは、他の日系企業との取引のために選ばれる立地になっています。

デュッセルドルフ日本商工会議所には実に 500社を超える会員があり、欧州最大の日系企業団体だそうですが、そのうち 300社がデュッセルドルフの企業だそうです(その他はハンブルク、フランクフルト、ミュンヘン、ドイツ国外よりの会員)。

2)デュッセルドルフの人口

デュッセルドルフ市の人口は、2020年末の統計で 62万人とドイツで7番目の大きさになります。やはり他のドイツの主要都市と同じく、日本と比べると地方中枢都市ぐらいの規模感です。

しかし、日本人の居住も多い周辺都市であるクレーフェルト / Krefeld、メーアブッシュ / Meerbusch、ノイス / Neuss などを加えると優に 100万人は超える計算になります。また、かなり広域ではありますが、ケルン / Köln やエッセン / Essen、ドルトムント / Dortmund など周囲の大型都市と合わせて、人口 1,100万人のドイツ最大の都市圏「ライン・ルール都市圏」ともされています。

外国人人口は 19%と実はドイツ主要都市の中ではかなり低い方になっています。同じく「移民バックグラウンド市民」(本人ないしは両親の少なくとも一方が外国籍を持って生まれた市民)も 35% と最低に近く、日本からの見え方とは違って「外国人が少なめ」という実像があります。

一方、日本人の人口は、外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると 7,300 人になっていまして、ドイツでは最大かつ、ヨーロッパでもロンドン、パリに次いで3番目になります。なお、周辺都市を含めた実質的な日本人人口は一口に1万人とされていまして、ミュンヘンフランクフルト圏の約2倍になります。したがって、日本語でお願いできる医師や美容室、日系のスーパーや飲食店が特に多いのが生活上の利点となっています。

日本人学校は全日制と補習校が両方あり、日本人幼稚園もあります。インターナショナルスクールは市北部の空港の近くにあります。

主な日本人の組織としては、先述のデュッセルドルフ日本商工会議所のほか、デュッセルドルフ日本クラブがあるほか、大学OB会、各県人会など、日本人の集まりはかなり豊富に存在しています。

3)デュッセルドルフの空港

デュッセルドルフの空港は市内北側になります。街から非常に近く、上の地図によればわずか 12分で着くことになっていますが、出発地点によっては途中に市街地を走る時間も長いので渋滞への注意は必要です。しかし、電車(RE という中距離列車や Sバーン)では中央駅から 10分前後で着きますので、やはり非常にアクセスはよいと言えます。

ドイツではフランクフルトミュンヘンに次ぐ、3番目の空港です。欧州中近東の範囲での本数は豊富です。また、日本との間の直行便もありました。(コロナウイルスの影響がありますので、逐次ご確認ください。ご参考: ウィキペディア「日本の空港から直行便のある都市一覧」

ただし、統計に基づかない定性的情報ではありますが、混雑が多くて乗り換えを逃した話など、オペレーション面の不満の声は多く、規模に比してフライトが多すぎるのかもしれません。

4)デュッセルドルフの事業税

事業税 / Gewerbesteuer とは、法人の利益への課税のうち市町村から課される部分で、各自治体ごとに異なる料率をかけます。一方、国と州から課されるのは法人税 Körperschaftsteuer / といって一律 15%ですが、その課税額に対し 5.5% の連帯付加税 / Solidaritätszuschlag(東ドイツなどの復興納税)が加わりますので、実質 15.825% となります。

事業税の計算の仕方は、3.5% のベースレート / Steuermessbetrag があって、それに市町村ごとの掛け目 / Hebesatz を掛けます。一般には 400% ぐらいの掛け目が一般なので(レンジは200-900%)、3.5% x 400% = 14% の事業税ということになります。

これに先の法人税 約15.8%と合わせますと、約29.8% ということになります。

さて、デュッセルドルフの掛け目ですが、440%とドイツの主要都市の中では平均的です。上記と同様に計算しますと、事業税が 15.4% で、法人税 約15.8%と合わせて約31.2% になります。

デュッセルドルフの場合には、フランクフルトミュンヘンと違って周辺に軽減税率を用いている都市がなく、上述のクレーフェルト / Krefeld、メーアブッシュ / Meerbusch、ノイス / Neuss といった衛星都市から、エッセン / Essen、ドルトムント / Dortmund、そして大都市であるケルン / Köln も含めて、軒並みデュッセルドルフよりも高税率で、おおよそ 500% 前後の掛け目になっています。

ただし、事業税の対象となる自治体は、単に本拠地というだけでは決まりません。売上の上がった場所、従業員数の拠点ごとの分布など、いくつかのファクターで総合的に求められます。具体的な計算や税務署への報告には日本人税理士を紹介しております。

5)日系企業のオフィス立地

デュッセルドルフの日系企業の多くは、市の中心部にオフィスを構えています(太線のマル)。すなわち、中央駅から北西に伸びるインマーマン通り / Immermannstraße は日系レストランやスーパーが立ち並ぶドイツ随一の日本街ですが、そこから西側のライン川に向けての領域になります。 

また、日本人学校や幼稚園のある(日本のお寺様もあります)ライン川西岸のエリアも日系企業に選ばれています(細い線のマル)。ここは日本人の居住が多く、日系のスーパーや飲食店も増えています。

その他では、特に物流関連の企業で、北側の空港周辺に倉庫ともどもオフィスを持たれていることもあります。

駐在員事務所の税務の謎

「納税義務はない」のに「税務登録が必要」なドイツ駐在員事務所の税務

ドイツの駐在員事務所は「納税義務がない」と言われています。
しかし同時に「税務登録が必要」とも言われます。

この点での混乱が多いため、駐在員事務所には具体的にどのような税務があるのか、以下のように整理をしてまとめてみます。

ドイツ駐在員事務所の税務  ① 法人税(納税義務なし)

法人税 Körperschaftsteuer のほか、事業税 Gewerbesteuer、それに関わる連帯付加税 Solidaritätszuschlag と、法人の所得に対する課税は駐在員事務所にはかかりません。

これは駐在員事務所の「営業はできない」という定義と表裏一体です。売上が立たないので、したがって課税対象所得がないということになります。

なお余談ですが、法人税は国と州から課され、連帯付加税と合わせて、税率は 16%弱になります。事業税は市町村から課される部分で、税率は各自治体ごとに異なりますが、およそ 14-15% になります。主要都市のレートは当サイト「ドイツ市場情報」より各都市「進出案内」をご参照ください。

ドイツ駐在員事務所の税務  ② 所得税(支払い義務あり)

ドイツの駐在員事務所であっても、従業員の所得税 Lohnsteuer は支払わなくてはなりません。それでは「納税義務なし」と言われていることと矛盾するようですが、あくまで従業員個人の所得であるので、たしかに駐在員事務所の納税義務ではありません。

しかし、雇用者として源泉徴収をして、従業員に代わって税務署に所得税を送金する務めはあります。

なお、社会保険には雇用者負担部分と従業員負担部分がありますが、双方の合計を所得税同様に雇用者が支払います。

(ご参考「駐在員事務所の現地採用」①と②)

ドイツ駐在員事務所の税務  ③ VAT 還付(これは朗報)

ご存知ない方も多いですが、「納税義務がない」駐在員事務所であっても事業体ではありますので、一般企業と同じく付加価値税・売上税 Umsatzsteuer の還付を受けることができます。

2021年末の時点で税率は 19%(ただし短距離交通、食品、書籍などは7%)です。すなわち、業者などの外部サービスや設備には全て 19% の税金がかかっていますので、それが国からされると大きなコストセービングになります。

駐在員事務所が税務登録をすると税金番号 Steuernummer を受け取ります。以上の ② 所得税支払いと ③ VAT 還付の際に、税金番号が必要になります。