GbR という会社形態

GbR とは

日系企業の現地法人やドイツで起業する方など当社のクライアントではあまり関連のない会社形態ですが、ご質問を受けることがありますので簡単に解説しておきます。(ご参考「ドイツ進出・現法4形態」

GbR とは Gesellschaft bürgerlichen Rechts のことで「民法上の組合」と言われるものです。

定款のように設立に契約は結びますが、法人ではありません。

数は決して少なくなく、2019年の政府の統計によれば、20万社以上を数えます(有限会社が55万社、株式会社が7600社)。

GbR はどういうときに使われるか

では、どういうときに GbR は使われるのでしょうか。

自営業者がパートナー制をとるときになります。典型的には、アーティスト・芸術家どうし、医者が診療所を開く場合、不動産業者が営業を共同で行う場合、などです。

GbR のその他の特徴

原則として事業登録は行います。また税務署の登録も必須です。

GmbH という言葉の意味

ドイツの会社では社名の終わりに GmbH がつくものが大多数です。ゲーエムベーハーと呼びます。何の略かと言うと長くなりますが、Gesellschaft mit beschränkter Haftung でして、責任 (Haftung) が限られた (beschränkt) 組織 (Gesellschaft) になります。mit は英語で言うと with ですから、英訳すると Company with limited liability でして、つまり有限会社です。

有限会社の特徴は別の記事でも説明していますが、ドイツの社会では最も利便性と信用力のバランスのとれた会社形態であるとして多用されています。
(ご参考記事「ドイツ有限会社の特徴7点」

事実、日本では有限会社と株式会社の数はほぼ同じぐらいですが、ドイツではなんと株式会社の数の70倍もの有限会社が存在します。
(ご参考記事「有限会社の多いドイツ」

上場や頻繁な株式の譲渡、株式を使ったM&Aなどを想定しない限りは、株式会社化する必要はないというのが、ドイツの制度と気質を背景とした上での、一般的な経済社会の通念です。したがって、中には意外な有名企業が GmbH のままであることも稀にあります。
(ご参考記事「こんな大企業も有限会社」

AG という言葉の意味

ドイツの会社では社名の終わりに AG(アーゲー) がつくものがあります。AG とは Aktiengesellschaft の略で、株式会社の意味です。このうち Akiten が株式で、Gesellschaft が共同体や組織を表します。(有名なマックス・ウェーバー著「ゲマインシャフトとゲゼルシャフト」の題名の後者に当たります。)

ドイツでは法人の中では有限会社が大多数を占めますが、有限会社の持ち分には流通性がありません。そのため、株式の流通とりわけ上場を想定するならば、原則として AG の形態をとる必要があります。

事実、上場している企業はほとんどが AG です(一部に SE という欧州株式会社もあり)。馴染みのある会社としては、Adidas AG や Siemens AG、それから Volkswagen AG、ベンツの Daimler AG、BMW の Bayerische Motoren Werke AG などがあります。また、カメラの Leica Camera AG やアパレルの Hugo Boss AG なども株式会社です。

逆に上場や頻繁な持分の譲渡を想定しないのであれば、有限会社 GmbH で十分であるというのが社会一般の認識です。(ご参考「『有限会社』の概要」

プロクリストとは

ドイツの会社組織に詳しい方はプロクリスト Prokurist という役職(大多数をしめる有限会社において定められた役職)をご存知かもしれません。

プロクリストは、会社から代表権を与えられた個人で、真の会社代表である取締役に準ずる立場になります。商業登記に名前が載る役職です。手元にある日本語の教科書では「支配人」という訳語が充てられていますが、わかりやすく言うと「サイン権のある部長職」といった便利な役どころです。

たとえば、総務担当のプロクリストが、駐在員のために会社名義で借りた居住用不動産物件の賃貸契約書にサインする、といったケースが一例です。

しかし実務の上で、契約の相手方によっては「取締役の署名でないと認めない」と主張されてしまった経験がないではありません。事実、会社オーナーから直接に会社経営を委託された経営者ではありませんので、取締役とは重みに違いあることは否めません。

ドイツには社長がいない

ドイツに社長がいない(有限会社でも株式会社でも)

ドイツは一般的な会社形態である有限会社であれば「取締役 Geschäftsführer」が、株式会社であれば「取締役会 Vorstand」のメンバーが、会社を代表し、かつ経営を行います。

日本と違って、特に定めのない限りは共同で会社を代表します。

会社トップは誰か(日本の場合・ドイツ有限会社の場合・ドイツ株式会社の場合)

日本であれば必ず代表取締役が一人はいるわけで、社長という職が会社法で定まっていないにもかかわらず、代表取締役が社長として内外ともに機能します。

ドイツでも、内部的に No.1 が誰かを決めることはありますが、共同代表ですので法的には等しく単なる取締役(平取?)です。その代わり、取締役 Geschäftsführer なり取締役会 Vorstand のメンバーとなると(平取と言えど?)、共同でそれ相応の社会的地位と責任が生まれてきます。

日系企業の現地法人の場合

日系企業の現地法人(通常は有限会社)でも駐在員のトップの方が取締役 Geschäftsführer になることが多いですが、単独でなる場合もあれば、現地採用社員のトップと共同でなる場合もあります。いずれにせよ、有限会社の取締役とは、商業登記裁判所の登記に載る重要な役職です。一般従業員とは異なる立場ですので、その地位と責任への理解が必要です。