ドイツ駐在員事務所の問題(法的根拠のない存在である)
ドイツの駐在員事務所は法律上の定めのない存在です。それゆえセットアップは簡単なのですが、契約行為に支障が出てしまいます。
それがよく顕著に出るのがオフィス物件の賃貸契約を結ぶときです。駐在員事務所の法的責任は日本の本社に帰属しますが、貸主側は責任追求のしにくい外国籍の賃借人(=日本の本社)との契約を避ける傾向にあります(EU内であれば有利です)。そこが問題です。
(ご参考「ドイツ駐在員事務所まとめ」)
オフィス物件の貸主側が求める書類要件(一般)
オフィスはじめ商業物件の賃貸期間は5年と10年が標準です。それだけの長期に及ぶこともあってか、契約に当たっては信用性審査のデューディリジェンスがしっかりと行われるのが通常です。
信用審査のためによく求められる書類要件は以下の通りです
- 登記簿謄本 Handelsregisterauszug
- Crefo (Creditreform) レポート・スコア
- 財務諸表(ドイツの法人が対象ですから年度決算 Jahresbericht と直近の月次財務諸表 BWA で、特に担当税理士の署名とスタンプの入ったもの)
(注: いい物件ほど取り合いが熾烈ですので、その他にもアピール資料を用意するべき場合もあります。)
さてこのうち、駐在員事務所では何が揃うでしょうか。
- 有限会社や独立支社と違って登記をしませんので、登記簿謄本はありません。
- Crefo レポートは一般には作られていないはずです。会社名と住所だけは登録がある可能性がありますが、その場合は少なくとも傷がないことの証明と受け取られる効果があるかもしれません。
- 財務諸表は普通はドイツのものはないはずです。
そこで、駐在員事務所は、日本の本社のものとドイツ現地であるものとを合わせて、フレキシブルに貸主側のデューディリジェンスを通過できるものを揃えなくてはなりません。
オフィス物件の貸主側が求める書類要件をどう揃えるか(駐在員事務所の場合)
貸主側の要望や着眼点によっても変わってきますが、以下のようなものを最低限揃えることになります。
その他適宜、ドイツの駐在員事務所の支払い能力を日本の親会社がサポートする約束など追加書類を差し入れる工夫が要ります。あとは交渉次第です。
ドイツ駐在員事務所のオフィス問題・この苦労を避ける打開策
上記のような書類の工夫で、賃貸契約まで漕ぎ着けることは可能です。しかし、スピーディーで簡単なスタートが切れるがゆえに選んだ駐在員事務所で、法人設立並みに手間がかかってしまっては本末転倒と思われる方もあるかもしれません。
そこで、実際にとられている打開策をご紹介しておきます。
- 個人名義で賃貸する(ただしこの場合は自営業可能なビザが必要な可能性があります)
- デューディリジェンスの甘い物件だけを狙う
- 取引先オフィスに間借りする
- 有限会社に変更する