ハンブルグ進出案内

ハンブルク / Hamburg について、現地法人設立や起業の観点からご説明します。

アルスター湖に面した市街地が美しく、海とも見紛う広大なエルベ川に面した港町です(実は海には面していません!)。ヨーロッパの北海方面の港として、ロッテルダム(オランダ)、アントワープ(ベルギー)に並ぶ海運業の要所になっています。

歴史的に「ハンザ同盟」で知られる自由商業都市で独立気質が高く、マスコミ・メディア産業の都でもあります。Google のドイツ拠点がハンブルクであるというのもうなずけます。

ドイツにしてはエンターテインメント産業も盛んで、ニューヨークとロンドンにははるか及ばないものの、常時大型の公演が行われている意外なミュージカルのメッカです。また、歓楽街のレーパーバーン / Reeperbahn は、少し怪しい観光地であるほか、あのビートルズが開花した場所として有名です。

目次

1)ハンブルクの産業
2)ハンブルクの人口
3)ハンブルクの空港
4)ハンブルクの事業税
5)日系企業のオフィス立地

1)ハンブルクの産業

ハンブルクの主要産業は、港湾都市だけあって運輸物流(いわゆるロジスティクス)関連産業がもっとも代表的です。それに次いで、小売やマスコミの存在感も大きく、文化的に開けた土地柄が想起されます。

ハンブルクの雇用人数別・大企業ランキング

  1. Tchibo GmbH(MUJI をもっと普通にしたような小売チェーン)
  2. Hapag-Lloyd AG(海運)
  3. Fielmann AG(メガネ・光学)
  4. Lufthansa Technik AG(空運)
  5. HGV(港湾運営。市の子会社)

6位以降は持ち分の関係などもあって入り組みますが、上記の Tchibo のほかにも、大手スーパーチェーンの EDEKA と通販チェーンの Otto もハンブルク本拠の大企業です。

ニベア / NIVEA で有名な(そもそもニベアがドイツのものということが知られていないかもしれませんが) Beiersdorf AG もハンブルクの会社です。

マスコミ・出版大手の Axel Springer AG や高級週刊誌 Der Spiegel の本社もハンブルクにあります。

2)ハンブルクの人口

ハンブルクはドイツで2番目に人口の多い都市です。直近の統計では人口 190万人になり、EU 圏内の首都以外では最も大きな都市になるそうです。リューベック Lübeck、シュベーリン / Schwerin など周辺都市を加えた「ハンブルグ都市圏」では 320万人となっています。

ドイツの主要都市の中では、都市圏としての周辺人口は最も少なく、それだけハンブルク市内が充実していると言えます。事実、東京のようにある程度の大きさの繁華街が複数あるのは、ドイツではベルリンとハンブルクだけです。人口3位のミュンヘン以下では、市中心部にほとんど全てが集中している傾向があります。

外国人人口は意外に少なく、直近の数字で 17%とドイツ主要都市の中では最も低くなっています。同じく「移民バックグラウンド市民」(本人ないしは両親の少なくとも一方が外国籍を持って生まれた市民)も 34% と最低水準です。トルコ人、ついでポーランド人が多いというのは通常通りですが、ついでアフガニスタン人やセルビア系の人が多いのが特徴的です。

日本人の人口については、外務省の「海外在留法人数調査統計」によれば、ハンブルク総領事館管轄の 4州に 5000人近く邦人が登録されているそうです。この 4州にはブレーメン / Bremen やフォルクスワーゲンのお膝元のニーダーザクセン / Niedersachsen が入っていますので、3000人ぐらいはハンブルクとその周辺に居住していると考えてよさそうです。

日本人学校はハルステンベック / Halstenbek という北西の郊外の街にあり、全日制・補習校ともに幼稚部から揃っています。インターナショナルスクールも市内西部に一校あります。

主な日本人の組織には先述のハンブルク日本人会がありますほか、ハンブルク独日協会もあります。

3)ハンブルクの空港

ハンブルクの空港は、古くからの歴史はあるものの、現在の規模はドイツで5番目とされています。空運の中心はフランクフルトであって、ハンブルクはあくまで海運の中心地だという位置づけです。

中心地から北に10キロ超の場所にあります。車では道路状況にもよりますが 20-30分、電車では Sバーン (S1) で30分になります。

飛んでいる便は、ほとんどが欧州域内となります。日本への直行便はなく、日本へ飛ぶにはフランクフルト、ロンドン、パリ、アムステルダム、イスタンブールなどで乗り換える形になります。

4)ハンブルクの事業税

事業税 / Gewerbesteuer とは、法人の利益への課税のうち市町村から課される部分で、各自治体ごとに異なる料率をかけます。一方、国と州から課されるのは法人税 /  Körperschaftsteuer といって一律 15%ですが、その課税額に対し 5.5% の連帯付加税 /  Solidaritätszuschlag(東ドイツなどの復興納税)が加わりますので、実質 15.825% となります。

事業税の計算の仕方は、3.5% のベースレート / Steuermessbetrag があって、それに市町村ごとの掛け目 / Hebesatz を掛けます。一般には 400% ぐらいの掛け目が一般なので(レンジは200-900%)、3.5% x 400% = 14% の事業税ということになります。

これに先の法人税 約15.8% と合わせますと、約29.8% ということになります。

さて、ハンブルクの掛け目ですが、470%とドイツの主要都市の中でも高めです。上記と同様に計算しますと、事業税が 16.45% で、法人税 約15.8% と合わせて約32.3% になります。

周辺都市では中には優遇的な事業税率を設定しているところもありますが、ハンブルクの場合は他のドイツ主要都市と違ってほとんど全ての機能がハンブルク市内に揃っているため、市外に拠点を置く企業は少なくなっています。

またいずれにせよ、事業税の対象となる自治体は、単に本拠地というだけでは決まりません。売上の上がった場所、従業員数の拠点ごとの分布など、いくつかのファクターで総合的に求められます。具体的な計算や税務署への報告には日本人税理士を紹介しております。

5)日系企業のオフィス立地

日系企業のオフィス立地ですが、ハンブルクの場合はあまり目立った傾向はありません。強いて言えば、市北部の空港周辺(上の青い円)、それから市東部のハム / Hamm などの産業地域(右の青い円)のエリアになります。

なお、左の赤い円が、先述の日本人学校のあるハルステンベック / Halstenbek になります。S3 沿線ですが近年は住宅難のため、路線沿いで住居を見つけるのは難しくなってきています。

ベルリン進出案内

ベルリン / Berlin について、現地法人設立や起業の観点からご説明します。

言わずと知れた首都で、人口はドイツ第一ですが、東西統一の前の影響は色濃く残っています。日本でのイメージとは違うかもしれませんが、実は物価が安く、所得レベルも低めです。

むしろベルリンの魅力は、ドイツの他の都市にはない自由でクリエイティブな空気。昔はテクノ音楽の都。現在ではベンチャーやアーティストが集まる街です。大企業よりも起業やフリーランスのビジネスに向いていると言えるでしょう。

目次

1)ベルリンの産業
2)ベルリンの人口
3)ベルリンの空港
4)ベルリンの事業税
5)日系企業のオフィス立地

1)ベルリンの産業

ベルリンの主要産業は、首都のため公益性の高いものになります。

ベルリンの雇用人数別・大企業ランキング

  1. Deutsche Bahn AG(ドイツ鉄道)
  2. Berliner Charité(医大)
  3. Klinikgruppe Vivantes(市立病院)
  4. BVG(ベルリン公共交通)
  5. Siemens AG(ミュンヘン本拠の重電メーカー)
  6. EDEKA(ハンブルク本拠のスーパーチェーン)
  7. Daimler AG(シュツットガルト本拠の自動車メーカー)
  8. Deutsche Post DHL(ドイチェポスト・郵便)
  9. Deutsche Telekom(ドイチェテレコム・通信)
  10. WISAG Gruppe(フランクフルト本拠の空港オペレーター)

「地方分権国家ドイツ」らしく、首都ベルリンは政治と観光の機能が優れていますが、主要産業は他都市が担っています。たとえば、金融はフランクフルト、自動車はシュツットガルト、電機はミュンヘンといった形です。

日系企業については、ベルリン日本商工会さんがホームページで会員一覧を開示されています。連邦政府・議会がベルリンにあるためか、マスコミ関係の企業が多くなっています。

このようにあまり大きな産業はありませんが、ベルリンにはベンチャー企業が多く育つ特性があります。下の地図のように、年間トップ 50 にランクされるベンチャー企業の4年間の合計数は、ミュンヘンと並んでベルリンがドイツで一番という数字があります。

https://www.top50startups.de/

2)ベルリンの人口

ベルリンはドイツで最も人口の多い都市です。直近の統計では 360万人を超えています。ポツダム Potsdam など隣接都市を加えた「ベルリン生活圏」では 470万人、より広域な「ベルリン・ブランデンブルグ首都圏」では 620万人となっています。他のドイツの主要都市と違って、周辺人口の方の比率は低くなっています。

外国人人口は 20.9%とドイツ主要都市の中ではかなり低めです。同じく「移民バックグラウンド市民」(本人ないしは両親の少なくとも一方が外国籍を持って生まれた市民)も 35.7% とかなり低い方になっています。ベルリン南部や東部を中心にトルコ系移民が多い印象が強いですが、実は外国人が少なめという統計結果になります。

日本人の人口は、外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると 3,700 人となっていまして、周辺都市を含まなければ、デュッセルドルフミュンヘンに次いで3番目です(フランクフルトは市外に日本人人口が多い)。日本人学校の児童・生徒数や先述のベルリン日本商工会の会員数からしても、現場の実感としても、フリーランスや大学関連で現地で長く暮らしている方が多いと見られます。駐在は、主に外交官やジャーナリストの方々がおられます。

日本人学校は全日制のほか補習校が二校あります。補習校には幼稚部も用意されています。所在地はそれぞれ西ベルリンになります。インターナショナルスクールは、各国大使館が集まる首都だけあって、非常にたくさんあります。

主な日本人の組織には、ベルリン日本人商工会のほか、ベルリン日独センターなどがあります。

3)ベルリンの空港

ベルリンの空港は、新しいものが2020年に開港したばかりです。以前あった3つの空港が、1つに統合されました。建設工事が10年近く遅れ、工事費が当初予定の3倍にも上ったことが、非常に頻繁にニュースになっていた有名な空港です。なお、現在はターミナル 1, 2, 5 がありまして、ターミナル 3, 4 は2030年ごろのオープンになりそうです。

場所は、シェーンフェルト / Schönfeld という空港が以前よりあった場所で(同空港が現在のターミナル5 に当たる)、市街地からは南東に 30km ぐらい離れた場所です。

電車での移動は、30-50 分ぐらいです。ベルリンは広いので、どこからどう乗り継ぐかによって、所要時間は大きく違ってきます。

飛んでいる便は、ほとんどが欧州域内となります。日本への直行便はなく、日本へ飛ぶにはフランクフルト、ロンドン、パリ、アムステルダム、イスタンブールなどで乗り換える形になります。

4)ベルリンの事業税

事業税 / Gewerbesteuer とは、法人の利益への課税のうち市町村から課される部分で、各自治体ごとに異なる料率をかけます。一方、国と州から課されるのは法人税 / Körperschaftsteuer といって一律 15%ですが、その課税額に対し 5.5% の連帯付加税 / Solidaritätszuschlag(東ドイツなどの復興納税)が加わりますので、実質 15.825% となります。

事業税の計算の仕方は、3.5% のベースレート / Steuermessbetrag があって、それに市町村ごとの掛け目 / Hebesatz を掛けます。一般には 400% ぐらいの掛け目が一般なので(レンジは 200-900%)、3.5% x 400% = 14% の事業税ということになります。

これに先の法人税 約15.8% と合わせますと、約29.8% ということになります。

さて、ベルリンの掛け目ですが、410%とドイツの主要都市の中ではフランクフルトと並んで最も低くなっています。上記と同様に計算しますと、事業税が 14.35% で、法人税と合わせて約30.2% になります。

周辺都市(ブランデンブルグ州という別の州になります)では田舎に行くと 300% 台と掛け目の低い街も多いですが、同州州都のポツダム Potsdam では 455% とむしろ高くなっています。

いずれにせよ、事業税の対象となる自治体は、単に本拠地というだけでは決まりません。売上の上がった場所、従業員数の拠点ごとの分布など、いくつかのファクターで総合的に求められます。具体的な計算や税務署への報告には日本人税理士を紹介しております。

5)日系企業のオフィス立地

日系企業のオフィス立地ですが、そもそもベルリンには日系企業が少ないので、あまり一般化できません。

ただし、ソニーさんは中央駅から南に下った旧東西の間のエリア。ユニクロさんの旗艦店も旧西ベルリンの中心である、ツォー / Zoo(動物園)から西に向かうクーダム / Kurfürstendamm (Ku’damm) にあります。(地図上、左側の丸)

一方、ブランデンブルグ門 / Brandenburger Tor の周りには連邦議会 / Bundestag はじめ政治機能が集まります。そのため、地図上の右側の丸のエリアには、マスコミ関係や士業の方々のオフィスが多めになります。 

デュッセルドルフ進出案内

デュッセルドルフ / Düsseldorf について、現地法人設立や起業の観点からご説明します。

ドイツでは日本人人口と企業数が最も多い都市です。ただし、ドイツ全体では小売やアパレルの印象が強い街です。また、北側にはいわゆるルール工業地帯が位置し、鉄鋼業や電力業の関連もあります。

目次

1)デュッセルドルフの産業
2)デュッセルドルフの人口
3)デュッセルドルフの空港
4)デュッセルドルフの事業税
5)日系企業のオフィス立地

1)デュッセルドルフの産業

デュッセルドルフの主要産業は、実は小売やアパレルです。その他では「ルール工業地帯」が近いため、鉄鋼や電力関連が目立ちます。

デュッセルドルフの雇用人数別・大企業ランキング

  1. デュッセルドルフ空港
  2. Rheinmetall AG(鉄鋼)
  3. Metro AG(小売)
  4. Mercedes Benz(自動車)
  5. Terex Corporation(建設機械)
  6. SMS Group GmbH(金属)
  7. E.ON SE(電力)

以上のように小売のほか、鉄鋼・電力関連が目立ちます。

なお、小売については、ドイツの代表的企業の本拠が集まっています。Metro AG はコストコのような国際的な会員制卸売・小売チェーンで、日本にも進出していました。また、同社からスピンオフした企業のうち、家電量販店最大手の SATURN と MediaMarkt を有する Ceconomy AG と、大型スーパーの Real GmbHは同じくデュッセルドルフ に本拠を残しています。(百貨店的業態の Galeria Kaufhof GmbH は Karstadt と合併してエッセン Essen が拠点)。

また、アパレル小売チェーンの Peek & Cloppenburg KG と、ファストファッションの先駆けだった C&A のドイツ本社も、デュッセルドルフにあります。

一方、日系企業については、重厚長大全盛の時代よりデュッセルドルフを拠点にする会社が多く、今日までその傾向が続いています。ドイツの他都市と違って、ドイツの現地企業との取引のためというよりは、他の日系企業との取引のために選ばれる立地になっています。

デュッセルドルフ日本商工会議所には実に 500社を超える会員があり、欧州最大の日系企業団体だそうですが、そのうち 300社がデュッセルドルフの企業だそうです(その他はハンブルク、フランクフルト、ミュンヘン、ドイツ国外よりの会員)。

2)デュッセルドルフの人口

デュッセルドルフ市の人口は、2020年末の統計で 62万人とドイツで7番目の大きさになります。やはり他のドイツの主要都市と同じく、日本と比べると地方中枢都市ぐらいの規模感です。

しかし、日本人の居住も多い周辺都市であるクレーフェルト / Krefeld、メーアブッシュ / Meerbusch、ノイス / Neuss などを加えると優に 100万人は超える計算になります。また、かなり広域ではありますが、ケルン / Köln やエッセン / Essen、ドルトムント / Dortmund など周囲の大型都市と合わせて、人口 1,100万人のドイツ最大の都市圏「ライン・ルール都市圏」ともされています。

外国人人口は 19%と実はドイツ主要都市の中ではかなり低い方になっています。同じく「移民バックグラウンド市民」(本人ないしは両親の少なくとも一方が外国籍を持って生まれた市民)も 35% と最低に近く、日本からの見え方とは違って「外国人が少なめ」という実像があります。

一方、日本人の人口は、外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると 7,300 人になっていまして、ドイツでは最大かつ、ヨーロッパでもロンドン、パリに次いで3番目になります。なお、周辺都市を含めた実質的な日本人人口は一口に1万人とされていまして、ミュンヘンフランクフルト圏の約2倍になります。したがって、日本語でお願いできる医師や美容室、日系のスーパーや飲食店が特に多いのが生活上の利点となっています。

日本人学校は全日制と補習校が両方あり、日本人幼稚園もあります。インターナショナルスクールは市北部の空港の近くにあります。

主な日本人の組織としては、先述のデュッセルドルフ日本商工会議所のほか、デュッセルドルフ日本クラブがあるほか、大学OB会、各県人会など、日本人の集まりはかなり豊富に存在しています。

3)デュッセルドルフの空港

デュッセルドルフの空港は市内北側になります。街から非常に近く、上の地図によればわずか 12分で着くことになっていますが、出発地点によっては途中に市街地を走る時間も長いので渋滞への注意は必要です。しかし、電車(RE という中距離列車や Sバーン)では中央駅から 10分前後で着きますので、やはり非常にアクセスはよいと言えます。

ドイツではフランクフルトミュンヘンに次ぐ、3番目の空港です。欧州中近東の範囲での本数は豊富です。また、日本との間の直行便もありました。(コロナウイルスの影響がありますので、逐次ご確認ください。ご参考: ウィキペディア「日本の空港から直行便のある都市一覧」

ただし、統計に基づかない定性的情報ではありますが、混雑が多くて乗り換えを逃した話など、オペレーション面の不満の声は多く、規模に比してフライトが多すぎるのかもしれません。

4)デュッセルドルフの事業税

事業税 / Gewerbesteuer とは、法人の利益への課税のうち市町村から課される部分で、各自治体ごとに異なる料率をかけます。一方、国と州から課されるのは法人税 Körperschaftsteuer / といって一律 15%ですが、その課税額に対し 5.5% の連帯付加税 / Solidaritätszuschlag(東ドイツなどの復興納税)が加わりますので、実質 15.825% となります。

事業税の計算の仕方は、3.5% のベースレート / Steuermessbetrag があって、それに市町村ごとの掛け目 / Hebesatz を掛けます。一般には 400% ぐらいの掛け目が一般なので(レンジは200-900%)、3.5% x 400% = 14% の事業税ということになります。

これに先の法人税 約15.8%と合わせますと、約29.8% ということになります。

さて、デュッセルドルフの掛け目ですが、440%とドイツの主要都市の中では平均的です。上記と同様に計算しますと、事業税が 15.4% で、法人税 約15.8%と合わせて約31.2% になります。

デュッセルドルフの場合には、フランクフルトミュンヘンと違って周辺に軽減税率を用いている都市がなく、上述のクレーフェルト / Krefeld、メーアブッシュ / Meerbusch、ノイス / Neuss といった衛星都市から、エッセン / Essen、ドルトムント / Dortmund、そして大都市であるケルン / Köln も含めて、軒並みデュッセルドルフよりも高税率で、おおよそ 500% 前後の掛け目になっています。

ただし、事業税の対象となる自治体は、単に本拠地というだけでは決まりません。売上の上がった場所、従業員数の拠点ごとの分布など、いくつかのファクターで総合的に求められます。具体的な計算や税務署への報告には日本人税理士を紹介しております。

5)日系企業のオフィス立地

デュッセルドルフの日系企業の多くは、市の中心部にオフィスを構えています(太線のマル)。すなわち、中央駅から北西に伸びるインマーマン通り / Immermannstraße は日系レストランやスーパーが立ち並ぶドイツ随一の日本街ですが、そこから西側のライン川に向けての領域になります。 

また、日本人学校や幼稚園のある(日本のお寺様もあります)ライン川西岸のエリアも日系企業に選ばれています(細い線のマル)。ここは日本人の居住が多く、日系のスーパーや飲食店も増えています。

その他では、特に物流関連の企業で、北側の空港周辺に倉庫ともどもオフィスを持たれていることもあります。

ミュンヘン進出案内

ミュンヘン / München について、現地法人設立や起業の観点からご説明します。

サッカーとビールで有名ですが、BMW やジーメンス / Siemens といった製造業、アリアンツ Allianz などの保険会社と、世界的大企業の本拠地でもあります。

目次

1)ミュンヘンの産業
2)ミュンヘンの人口
3)ミュンヘンの空港
4)ミュンヘンの事業税
5)日系企業のオフィス立地

1)ミュンヘンの産業

ミュンヘンの主要産業は、上述のように自動車や重電を中心として製造業、それから保険業になっています。ドイツを代表する世界的企業が揃っています。

ミュンヘンの雇用人数別・大企業ランキング

  1. ミュンヘン市
  2. BMW AG(自動車)
  3. TUM(ミュンヘン工科大学)
  4. ミュンヘン空港
  5. MAN SE (トラック)
  6. Siemens AG(重電・家電)
  7. Allianz SE(保険)
  8. Linde AG(産業ガス)
  9. Münchner Rückversicherung(ミュンヘン再保険)
  10. Sparkasse München(地銀)

したがって日系企業も電機、自動車部品関連のメーカーがほとんどです。通信セクターも存在感があります。

2)ミュンヘンの人口

ミュンヘンはドイツ第3の人口を誇り、直近の統計では150万人を超えています。日本の主要都市と比べるとかなり小さいですが、他のドイツの主要都市と同じく周辺人口が豊富で、州内の「ミュンヘン計画区」では290万人、より広域の「ミュンヘン都市圏」ですと610万人にも上ります。

また、ミュンヘンはドイツ主要都市の中で人口密度が一番高く、1キロ平米あたりの人口は 4,800 人になります(東京は 6,000 人強)。

外国人の住民比率は 27% と主要都市の中ではフランクフルトに次いで高くなっていますが、「移民バックグラウンド市民」(本人ないしは両親の少なくとも一方が外国籍を持って生まれた市民)の割合は 34% と逆に主要都市の中では最も低くなっています。つまり「駐在も含めて仕事の上での一代限りの移住は多いが、家族代々の移民や混血は少なめ」ということになりますが、これは実感と合っています。たしかに、ミュンヘンは地元意識が強いので、我々外国人には深く入り込みにくいと一般に言われています。

購買力統計 / Kaufkraftindex では、ミュンヘンと周辺都市がドイツでトップに並んでおり、同時に物価も高めになっています。不動産価格も高く、家賃価格はドイツで一番となっています。

一方、日本人の人口は、外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると 5,500 人になっていまして、デュッセルドルフに次いで日本人の多い都市になります。

日本人学校は全日制と補習校が両方あり、日本人幼稚園もあります(それぞれ所在地は別)。インターナショナルスクールは主に3校(Munich International School, Bavarian International School, St. George’s)があります。

ミュンヘン日本人会には個人会員と法人会員の両方が所属していて、イベントや会報の発行が活発に行われています。

3)ミュンヘンの空港

ミュンヘンの空港は、市の北東30キロすぎのところに位置し、イスマニング / Ismaning やガーヒング / Garching といった近隣都市の更に北東になりますが、ミュンヘン市に入っています。

上の地図では 30分前後で着くように出ていますが、渋滞が多いので実際の感覚は車で 45分ぐらいです。電車(Sバーンの S1, S8)でもミュンヘン中央駅から 40分前後かかります。

ミュンヘン空港はフランクフルトの空港に次ぐドイツ第二の空港で、規模も大きく本数も豊富です。アメリカやアジアへのフライトもあり、日本との間の直行便もあります。(コロナウイルスの影響もありますので、逐次ご確認ください。ご参考: ウィキペディア「日本の空港から直行便のある都市一覧」

4)ミュンヘンの事業税

事業税 / Gewerbesteuer とは、法人の利益への課税のうち市町村から課される部分で、各自治体ごとに異なる料率をかけます。一方、国と州から課されるのは法人税 / Körperschaftsteuer といって一律 15%ですが、その課税額に対し 5.5% の連帯付加税 / Solidaritätszuschlag(東ドイツなどの復興納税)が加わりますので、実質 15.825% となります。

事業税の計算の仕方は、3.5% のベースレート / Steuermessbetrag があって、それに市町村ごとの掛け目 / Hebesatz を掛けます。一般には 400% ぐらいの掛け目が一般なので(レンジは200-900%)、3.5% x 400% = 14% の事業税ということになります。

これに先の法人税 約15.8% と合わせますと、約29.8%ということになります。

さて、ミュンヘンの掛け目ですが、490%とドイツの主要都市の中では最も高くなっています。上と同様に計算しますと、事業税が 17.15% で、法人税 約15.8% と合わせて約33.0% になります。

しかし一方で、周辺の他都市は 350% 前後の低めの都市が多く、28-29% ぐらいの着地が望めるところが多くあります。後述のようにミュンヘン市街地とミュンヘン空港の間には日系企業が拠点を置くエヒング Eching やイスマニング Ismaning など郊外都市がいくつかありますが、330% と更に低くなっています。

ただし、事業税の対象となる自治体は、単に本拠地というだけでは決まりません。売上の上がった場所、従業員数の拠点ごとの分布など、いくつかのファクターで総合的に求められます。具体的な計算や税務署への報告には日本人税理士を紹介しております。

5)日系企業現地法人のオフィス立地

ミュンヘンでは、日系企業の現地法人の多くは中心部から北側のシュヴァービング / Schwabing 周辺か、東側のボーゲンハウゼン / Bogenhausen からリーム / Riem 周辺にオフィスを構えています。市の中心部は、オフィス賃料が高く渋滞も多いので、来客がよほど多い業態でない限りは割に合わないところがあると思われます。

また、北東に位置するミュンヘン空港手前の郊外都市であるエヒング / Eching やイスマニング / Ismaning を選ぶ企業もあられます。これらの都市はミュンヘンよりは事業税が安く(上記「4)ミュンヘンの事業税」ご参照のこと)、オフィス賃料も割安になります。また周辺のガーヒング / Garching などは優良な居住エリアですので、郊外型の職住近接生活も実現可能です。

ドイツの地方分権・連邦制

地方分権国家ドイツ・16の州による連邦制

ドイツは連邦国家で、正式な国名はドイツ連邦共和国 (Bundesrepublik Deutschland) になっています。日本で提唱されることのある「道州制」のモデルにも使われています。

中央の連邦政府に対して、各州もある程度独自の権限をもっていて、州ごとに政策の違いが見られます。中央の連邦政府が受け持つのが外交や軍事で、地方の州政府が受け持つのが教育や警察というのが、よく言われる役割分担です。

コロナウイルスの感染症対策の初期では、メルケル首相と各州知事による会合で国の基本対策を決定していました。これが国策と州レベルの政策とがオーバーラップする領域だったのでしょう。

州は全部で16ありますが、ベルリン・ハンブルグ・ブレーメンの3都市は州に数えられます。それぞれ個性があり国全体としての多様性に寄与しているとされています。(ご参考・ドイツ大使館サイト「16の連邦州」

地方分権国家ドイツ・具体的に州ごとに違うもの

では、具体的に州が独自で決定し、州により相違があるものには、どのようなものがあるのでしょうか?

  • コロナウイルス対策: 感染状況が州によって違うので当然かもしれませんが、ワクチン未摂取者の行動制限、集会やスポーツ可能人数、飲食店の開店時間・アルコール提供の可否など、州ごとに決定されています。
  • 祝日と長期休暇: 祝日は基本的にカトリックの地域で多め、プロテスタントの地域で少なめです。学校の長期休暇(春、夏、秋、冬)はバカンスのピークをずらすのに機能しています(参考サイトはこちら。よく休む様が見てとれます)。
  • 各種業法: 業界によって州ごとに規則が違うことがありますが、たとえば不動産売買手数料は週によって料率や支払い手が変わってくるので、注意が必要です。

地方分権国家ドイツ・主要都市の個性も見逃せない

以上は連邦制の下では州が大きな権限を持っているという解説でした。

しかし、ドイツに進出・起業する上で見逃せないのが、都市ごとの個性の違いです。首都はベルリンなのに、ミュンヘンやフランクフルトなど、首都をしのぐ機能と特色を持つ都市がいくつもあります。

これは別ページで紹介したいと思います。