現地法人の進出先としてなぜドイツが選ばれるのでしょうか?
ドイツは言うまでもなく「欧州政治経済の中心」ですが、それよりもっと実務的な理由があります。
- 欧州の地理的中心でもありヨーロッパ各地へのアクセスがよい
- ドイツからは日本への直行便が豊富である
- Brexit でドイツの重要性が高まっている
- 大国・連立政治の安定感
- ドイツは英語が通じやすい
- 意外に生活費が安い
- 治安がよく安定した法治国家である
以下、各ポイントごとに見ていきます。
1)欧州の地理的中心でもありヨーロッパ各地へのアクセスがよい
地理的に欧州の中心にあり、大陸主要都市には1時間前後で、ロンドンへは2時間ほどで飛ぶことができます。
欧州大陸は鉄道網が発達しているので、パリやブリュッセル、アムステルダム、それからバーゼルやプラハなど、各地へ直通の長距離列車も豊富です。
また、アウトバーンを通っての自動車での移動も可能です。たとえば、デュッセルドルフはベネルクス各国へ近く、ブリュッセルやロッテルダムまでは車で2時間です。
2)ドイツからは日本への直行便が豊富である
上述のように、大陸主要都市には1時間前後で、ロンドンへは2時間弱で飛ぶことができます。フランクフルトは欧州でトップを争う空港であるほか、ミュンヘンも十指に入る大型空港です。
ベルリン、ハンブルグ、デュッセルドルフ、ケルン・ボン、シュツットガルトなど、他の空港からも欧州各国への便が出ています。
日本へは、なんとフランクフルト、ミュンヘン、デュッセルドルフの3都市から直行便が出ています(東京、大阪、名古屋行き)。他の欧州諸国ではイタリア以外は一都市からしか直行便はないはずですので、これは大きな魅力です。
(なお、コロナ下で変更がありますのでご注意ください。)
3)Brexit でドイツの重要性が高まっている
欧州への営業免許のパスポート無効化でロンドンから全欧州をカバーしていた金融機関は、欧州拠点機能の一部をフランクフルト、パリ、アムステルダムなどに移しました。
関税と貿易事務の増加から、EUとイギリスの間の貿易は激減し、他の多くの業種で欧州拠点を大陸に持つ流れになっています。
これまで英語の利便性からイギリスに多く集まっていた日系企業の欧州拠点も例外ではありません。
その中では、イギリスを除いて欧州拠点として一番選びやすいのが、欧州政治経済の中心であるドイツです。
4)大国・連立政治の安定感
小国では右翼政党が政権をとったり、地方で独立運動が起こったりと政治に安定感がありません。そこが、日本にいては感じにくいビジネスリスクと言えます。
また、コロナの折には「ロックダウンをせずに集団免疫に挑む」といった実験ができてしまうのも小国です。
ドイツでは、CDU と SPD の二大政党が政策面で似通ってきているのと同時に、いずれも単独では過半数をとれず、緑の党(Grüne)や自由民主党(FDP)以下の中堅政党が連立政権に入る形が通常化しています。
変化を求める有権者には歯痒い状態かもしれませんが、ビジネス環境の安定性という意味では政治的安定感が評価ができます。(ただし、やや左傾化・北欧化しつつあることは指摘しなくてはなりません。)
5)ドイツは英語が通じやすい
フランスやイタリアと比べれば、ドイツはかなり英語が通じます。むしろビジネスの場ではほぼ問題なく英語が使えます。
たしかに、北欧やベネルクスの小国のように日常レベルでもよく通じるかというと、必ずしもそうとは言えません。
しかし、フランクフルトやシュツットガルトのような外人比率の高い都市や、ベルリンやハンブルグの中心部ではかなり英語が通じますし、デュッセルドルフのように日本人の多い都市では日本語でもある程度暮らしていけます。
6)意外に生活費が安い
ドイツは主要先進国の中では物価、とりわけ生活費が安い利点があります。OECD の統計では、ドイツの物価レベルはちょうど OECD 平均の 100。日本は 113、アメリカは 117、イギリスは 105 と出ています。ヨーロッパでは、スイスが 142、フランスが 98、オランダが 104 など。
イギリスとフランスはロンドンとパリが国の平均を大きく超えていると思われますが、ドイツでは首都ベルリンはむしろ物価の安さで知られる発展途上の都市です。また、国の機能が各地方都市に分かれていることから、他の主要都市でもロンドンのような高物価は見られません。
住宅価格や家賃は、家自体が大きいので単純比較はできませんが、平米単価は安めです。1平米あたりの住宅家賃は主要都市でも 12ユーロ程度(坪あたり 4800円)になっています。
また、食材が安く、重要栄養源のジャガイモはスーパーに行けば 3キロで 1.8ユーロと、食べ切るのが難しいぐらいです。また、スパゲッティーは 500g が 65セントなど、これも非常に安価です。魚介類を除けば食材は安く、自炊をする限りは低コストで生活できます。(注: 醤油や味噌、調味料は、主要都市ならばアジアスーパーで買うことができます。)
7)治安がよく安定した法治国家である
ドイツも移民が多いので、決して治安の心配がないとは言えません。しかし、上の地図のように特に危険度の高い都市はありません(赤に近いほど治安が悪く、緑は治安がよい)。
法に厳格な国家で、その執行人として警察が非常によく機能しています。日常的にパトカーの巡回や警官の見張りがあって、秩序正しく住む一般市民には安心感があります。
また、治安とは別の意味でも、契約通りにことが進む法治国家と言えます。家柄や人種による見えない差別や、マフィアの介在などが見られません。
まとめ
以上、ドイツがヨーロッパの進出先として選ばれる理由・選ぶべき理由を7つご紹介しました。
- 欧州の地理的中心でもありヨーロッパ各地へのアクセスがよい
- ドイツからは日本への直行便が豊富である
- Brexit でドイツの重要性が高まっている
- 大国・連立政治の安定感
- ドイツは英語が通じやすい
- 意外に生活費が安い
- 治安がよく安定した法治国家である
より多くの日系企業が、ドイツを拠点に、輸出や海外売上高を伸ばしてくださればと思っております。