日系企業の現地法人として選ばれる4つの会社形態の一つ、独立支社 Zweigniederlassung について、解説します。
日本のコンサルティング会社がこれからドイツに進出しようという顧客に薦めるケースがありますが、実は現地ではあまり用いられていない会社形態です。設立が煩雑な割にメリットが少ないので、よくよくニーズと合っているかどうかを検討する必要があります。
1)ドイツの独立支社は、あくまで日本の本社の支店的役割
独立支社は実質的には支社よりも支店という感覚です(Niederlassung / 支店 という言葉が日常的に使われる一方、独立支社という制度は実務的にあまり知られていない)。
事業を独立して行うことがあるとされていますが、法的責任はあくまで本社に帰属します(日系企業の場合は日本の本社)。
社名も本社のものを使います(例: XYZ Co., Ltd.)。ただし「デュッセルドルフ 市登録の支社です」といった追記をつけることは可能です(例: XZY Co., Ltd. Zweigniederlassung Düsseldorf)。
また、ドイツの法人ではありませんので、代表者や従業員のビザ取得に困難をきたすこともあります。
2)しかし独立支社の場合は、登記の対象である
非独立支社との大きな違いはここで、独立支社の場合は商業登記の対象となります。その点は信用力にプラスになります。
一方で、登記の対象となるということは、親会社の登記簿謄本の法定翻訳・アポスティーユ取得や、公証役場での署名などが必要で、有限会社設立のプロセスと同じく煩雑です。
3)実務上マイナーである
役所の認知が十分とは言えず、事業登録などで思いのほか時間や手間がかかる可能性があります。また銀行でも馴染みがありませんので、インフラが整っていないという意味で、設立するが煩雑な会社形態だと言えます。
元よりの法的な建て付けからしても、社会的認知も低いことからも、あくまで外国企業である本国の本社の名代として事業を行うことになります。