ドイツ駐在員事務所まとめ

日系企業の現地法人として選ばれる4つの会社形態の一つ、駐在員事務所 Repräsentanz について、ご説明します。

販売や営業はできないものの、本格進出前の市場調査やリレーションシップづくりのために利用されることはよくあります。

1)ドイツ駐在員事務所は法的根拠のない存在

独立支社非独立支社のように法人格はなく社会的に認知が低いというだけではなく、法律の上で定めのない存在でもあります。

そのため、契約当事者能力がないことが問題になることあります。よくある例としてオフィスの賃貸がし難いことが挙げられます。詳細と対策は「駐在員事務所のオフィス問題」にまとめております。

また、名称は日本の本社のものを使わなくてはなりませんが、駐在員事務所であることを示す言葉を付記することは可能です。詳しくは「駐在員事務所の名づけ方」をご参照ください。

2)ドイツ駐在員事務所は営業目的には利用できない

駐在員事務所は、あくまで市場リサーチや技術サポートなど、営業活動でないものに限定されます。利益が上がったときには課税対象になりますので、「法的に規定のない存在」であることと矛盾が生じます。根拠として、日独租税協定が二重課税回避を認めない「恒久的施設」Betriebsstätte に該当してしまい(同第5条)、別の会社形態が必要になります。

このように大きな制限がありますが、本格進出の前の最初の一歩としての利用価値はあろうかと思われます。

具体的に駐在員事務所で「どこまでできるか」については「駐在員事務所にできる業務」をご覧ください。

3)ドイツ駐在員事務所はスタートが簡単(事業登録はおすすめするが必要ではない)

商業登記はもちろん、事業登録の手間すらなく、その分設立事務は簡単です。最低限必要なのは、税務と労務上の登録だけです。(労務登録については「駐在員事務所の現地採用」をご参照ください。)

しかし、事業登録を任意で行うことはできます。事業登録がないと、信用力の問題からオフィス賃貸ができないことも多く、業務上の支障が多いのが現実です。また、事業登録があれば銀行口座が開けたり、カーリースができる業者も出てきます。したがって、事業登録をすることをお勧めしております。

ただし実務上、地方の役所では駐在員事務所の対応経験がなく、事業登録をする場合は難航するケースがありますので注意が必要です。(詳しくはご相談ください。

4)駐在員事務所であっても VAT 還付は可能

営業活動はせず売上・利益に基づいた課税はありませんが、費用のVATについて還付を受けることができます。

また、従業員の所得税や社会保険は支払う必要があります。

駐在員事務所の税務については「納税義務がない」と言われているのに、上述のように「税務登録は必要」であることから、よく混乱があります。それについては、「駐在員事務所の税務の謎」でご説明しています。

所得税・社会保険はじめ、駐在員事務所の採用については「駐在員事務所の現地採用」)をご参照ください。

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