GbR という会社形態

GbR とは

日系企業の現地法人やドイツで起業する方など当社のクライアントではあまり関連のない会社形態ですが、ご質問を受けることがありますので簡単に解説しておきます。(ご参考「ドイツ進出・現法4形態」

GbR とは Gesellschaft bürgerlichen Rechts のことで「民法上の組合」と言われるものです。

定款のように設立に契約は結びますが、法人ではありません。

数は決して少なくなく、2019年の政府の統計によれば、20万社以上を数えます(有限会社が55万社、株式会社が7600社)。

GbR はどういうときに使われるか

では、どういうときに GbR は使われるのでしょうか。

自営業者がパートナー制をとるときになります。典型的には、アーティスト・芸術家どうし、医者が診療所を開く場合、不動産業者が営業を共同で行う場合、などです。

GbR のその他の特徴

原則として事業登録は行います。また税務署の登録も必須です。

ドイツ法人設立と定款

ドイツの法人の定款・よくいただく質問

定款 Satzung / Gesellschaftsvertrag は法人の根本規則や基本的とりきめに当たります。商業登記の対象で、公正証書として公証人の認証を必要とします。

定款の記載事項は、商号、住所、事業の目的、基本出資金の額と持分などです。

よくご質問を受けるのはこういった定款記載事項ではなくて、「定款はいつまでに作ればいいか」「定款作成の費用はいくらか」「後から変更ができるのか」など実務に関連することです。それらについて、以下の各項目でお答えしていきます。

定款はいつまでに作られなくてはならないか

原則として会社設立プロセスの一番はじめに行います。特に出資者が決まっていないと、その後の書類準備ができません。(ご参考:「ドイツ会社設立の手続き」の工程表の①に当たります。)

また、取締役 Geschäftsführer の任命は定款の絶対的必要記載事項ではありませんが、会社設立の手続きを実際に行う役割があることから、やはり一番はじめに決められるべきです。

ドイツでの定款作成の費用

私どものクライアントには、会社設立サポートの過程で全ての定款記載事項を相談して決めていただきます。その上で公証人にこちらの依頼通りの定款作成を依頼します。内容の複雑さによりますが、通常は公証認証の署名の場を含めて 800 ユーロぐらい(+ VAT 19%)です。

定款の変更について

定款記載事項の変更は、総会の特別決議(原則として4分の3以上)をもって、公証人の認証と登記をもって行うことが可能です。

持分が定款記載事項ですから、持分の譲渡・増資・減資も定款の変更に該当します。

シュツットガルト進出案内

シュトゥットガルト / Stuttgart について、現地法人設立や起業の観点からご説明します。

ベンツとポルシェで知られる自動車都市です。外国人比率はフランクフルトに次いで高く、ドイツの進出先として適しています。実際の進出の際には後述のように、盆地である地形やビザ取得のポイントなどに考慮が必要です。

目次

1)シュトゥットガルトの産業
2)シュトゥットガルトの人口

3)シュトゥットガルトの空港
4)シュトゥットガルトの事業税
5)日系企業のオフィス立地

1)シュトゥットガルトの産業

代表的企業を見れば、主要産業は一目瞭然です。

シュトゥットガルトの雇用人数別・大企業ランキング

  1. Daimler AG(メルセデスベンツのこと)
  2. Bosch GmbH(ボッシュ)
  3. Porsche AG(ポルシェ)
  4. LBBW(州立銀行)
  5. Wüstenrot & Württembergische AG(住宅金融・保険)
  6. MAHLE GmbH(エンジン、自動車部品)
  7. Breuninger(高級デパート)

ボッシュは重電家電も含めた巨大コングロマリットですが自動車関連が大半ですので、シュツットガルトは大手7社中4社が自動車関連だと言えます。

したがって、日系企業の現地法人も、ベンツやボッシュを取引先とした会社や部門が多くなっています。

2)シュトゥットガルトの人口

市の人口は2020年末の統計で63万人とされています。ドイツで6番目の大きさになりますが、やはり他のドイツの主要都市と同じく、日本と比べると地方中枢都市ぐらいの規模感です。しかし、シュツットガルトもやはりエスリンゲン / Esslingen はじめ周辺都市と合わせて経済圏を形成していますので、隣接都市を合わせると100万人超と見ることができます。また、南北のハイルブロン / Heilbronn やチュービンゲン / Tübingen など衛星都市も含めた「シュツットガルト都市圏」としては540万人にも上ります

また、ドイツはどの都市も同じ傾向がありますので、この63万人の人口でドイツ7番目の大きさとなっています。

外国人比率は 24.6% と高く、「移民バックグラウンド」の市民(本人ないしは両親の少なくとも一方が外国籍を持って生まれた市民)の率も4割と、ドイツの主要都市ではフランクフルトに次いで2番目となっています。

日本人の人口は、1700人から2000人ぐらいと言われています。日本人学校は補習校はありますが、全日制がありませんので、インターナショナルスクール(ISS や SIS)に通うのが一般的です。

シュトゥットガルト日本人会は、強力なリーダーシップの下で個人会員・法人会員の区別なく、活発に四半期ごと・月次の各種行事を行なっていて、非常に交流が盛んです。会員数400名と言いますので、日本人人口全体と比べた会員比率は非常に高いものとなっています。

3)シュトゥットガルトの空港

シュツットガルトの空港は、市の南端のフィルダーシュタット / Filderstadt とラインフェルデン・エヒターディンゲン / Leinfelden-Echterdingen の境にあります。また、メッセ・シュトゥットガルトと隣接してもいます。

上の地図では市の中心から車で16分と出ていますが、盆地でかつ車社会であるシュツットガルトでは、渋滞のため予想以上に所要時間がかかることが多く、感覚的には30分ぐらいかかります。

電車(Sバーン)では街中から25分前後になります。

あまり有名な空港ではなく、ほとんどがドイツ国内ないしは欧州主要都市向けとなります。日本への飛行には、フランクフルト、ロンドン、パリ、アムステルダム、イスタンブールなどへ飛んでから乗り換える形になります。

もっとも、最近ではフランクフルトまでは特急(ICE)で1時間15分ほどで行くことができます。

4)シュトゥットガルトの事業税

事業税 / Gewerbesteuer とは、法人の利益への課税のうち市町村から課される部分で、各自治体ごとに異なる料率をかけます。一方、国と州から課されるのは法人税 / Körperschaftsteuer といって一律 15%ですが、その課税額に対し 5.5% の連帯付加税 / Solidaritätszuschlag(東ドイツなどの復興納税)が加わりますので、実質 15.825% となります。

事業税の計算の仕方は、3.5% のベースレート / Steuermessbetrag があって、それに市町村ごとの掛け目 / Hebesatz を掛けます。一般には 400% ぐらいの掛け目が一般なので(レンジは200-900%)、3.5% x 400% = 14% の事業税ということになります。

これに先の法人税 約15.8% と合わせますと、約29.8%ということになります。

さて、シュツットガルトの掛け目ですが、420%と主要都市の中では低めです。上記と同様に計算しますと、事業税が 14.7% で、法人税 約15.8% と合わせて 30.5% になります。

また一方で、シュツットガルトの近郊には後述のようにエスリンゲン / Esslingen はじめ企業の拠点となる都市が多いですが、いずれも 390-400% 程度の掛け目で、シュツットガルトとあまり差はありません。あえて低いところ探すと、メルセデスの工場がある Sindelfingen が 370% と低めのようです。

もっとも、事業税の対象となる自治体は、単に本拠地というだけでは決まりません。売上の上がった場所、従業員数の拠点ごとの分布など、いくつかのファクターで総合的に求められます。具体的な計算や税務署への報告には日本人税理士を紹介しております。

5)日系企業現地法人のオフィス立地

シュツットガルトでは、日系企業の現地法人の多くは南側の郊外に居を構えています。それには以下の理由があります。

  1. ダイムラー(メルセデスベンツ)はじめ主要現地メーカーが郊外に多いこと
  2. 盆地であるシュツットガルト市街地にはオフィス向きの立地が少ないこと
  3. 郊外からシュツットガルト市街地への通勤には渋滞が多いこと

実際に、エスリンゲン / Esslingen に大手日系企業が多いほか、ラインフェルデン・エヒターディンゲン / Leinfelden-Echterdingen にも数多くの日系の現地法人オフィスがあります。その他の周辺の市でも日系企業が活躍されています。

また、裏話ですが、ビザ取得のためにはシュツットガルト市以外の自治体で申請することが有利となっています。

GmbH i.G. という状態

GmbH i.G. とは何か

ドイツで主流の会社形態である有限会社ですが、設立の途中で GmbH i.G. という形態になります(例: Nippon Motors Europe GmbH i.G.)。

“i.G.” とは “in Gründung” の略で、設立中という意味です。そのため日本語では「設立中の会社」と訳されます。

日本語での実務では、「ゲーエムベーハー・イン・グリュンデュング」とフルネームで読んだり、i.G. の部分のドイツ語アルファベットで「イーゲー」と呼んだりしています。

ポイントは、「設立中」すなわち登記完了前でありながら、すでに会社の名前で(i.G. をつけて)活動を行うことができるということです。

ただし、登記前の間は法人格がまだないため、責任は代表者(取締役)に帰属し、登記後に改めて会社に引き継がれます。

いつから GmbH i.G. か

会社の名前で(i.G. をつけて)活動を行うことができる GmbH i.G. ですが、いつからその状態になるのでしょうか?

それは、定款・設立証書、登記申請書に公証人オフィスにて署名した後からです。

登記が完了した後には、”i.G.” がとれて、普通に GmbH と名乗れますドイツで主流の会社形態である有限会社設立の途中で GmbH i.G. という形態になります(例: Nippon Motors Europe GmbH)。

(ご参考「ドイツ会社設立の手続き」

GmbH i.G. で可能なことの具体例

それでは、GmbH i.G. (設立中の会社)になってから、具体的にどのようなことができるのでしょうか? 実際によく行われることの例をお示しします。 

  • 従業員の採用(日本からの従業員のビザ申請を含む)
  • オフィスや店舗の賃貸契約
  • 銀行口座開設(むしろ基本出資金払い込みのため必須)
  • (お勧めしないがオープニングバランス提出後には)GmbH i.G. 名義での支出が可能

(おまけ)豆知識

逆に解散を決めて精算を開始した後の状態を GmbH i.L. と言います。L は Liquidation で精算を意味し、日本語では「精算中の会社」と言われます。

ドイツ会社設立と公証人

ドイツ会社設立における公証人の役割

ドイツの会社形態のうち、商業登記が必要な、株式会社、有限会社独立支社などは、公証人 Notar の下での書類の認証が必要です。

公証人は、設立証書(定款含む)と登記申請書を認証した上で、商業登記裁判所に提出します。また、定款の作成も依頼することが可能です。

なお、この認証をもって、「設立中の会社」GmbH i.G. として、法人格は未取得ながら、採用や取引が可能になります。

(ご参考「ドイツ会社設立の手続き」

 

そもそもドイツの公証人とは?

ドイツにおける公証人とは、日本の公証役場と同じく文書の認証をする役目と同時に、定款作成などの司法書士のような役割も果たします。弁護士と兼業の人も少なくありません。

会社実務では、当初の設立のほか、定款の変更、持分の譲渡、増資・減資など、登記内容を変更する必要があるものについては、公証人の認証が必要です。

会社設立以外の公証人の認証対象としては、不動産の譲渡・取得、夫婦の財産契約、遺言などがあります。

公証人は、一般には数人で法律事務所や公証人事務所を運営していて、事務所には何人かのパラリーガル的な事務員や秘書、受付がいる構成になります。

 

どういう公証人を選べばよいか

公証人の仕事の内容や費用には、ほとんど差はありませんが、公証人を選ぶ場合には以下の点に注意するべきです。

  • 署名をしに行くことになるので、公証人事務所へのアクセスがよいこと
  • 公証人の地域の商業登記裁判所に登記申請されるので、商業登記をしたい都市(登記地の都市名は、登記番号とともに、ウェブサイト、メールの署名、レターヘッドなどに表示するものです)
  • 彼らの仕事の中で会社設立はあまり旨味のある仕事ではないため、後回しにされるような忙しさや仕事ぶりでない公証人であること

料金については、認証の仕事自体は単価が決まっていますので、あとは定款作成を公証人に委託した事務手数料などによって変わります。ただし、通常は 800 ユーロぐらい(+ VAT 19%)が標準的です。

(公証人のご紹介が必要な場合はお問い合わせください)

 

署名をするときの注意

設立証書(定款)と登記申請書のドラフトが届いて、内容のチェックまでできたら、公証人の事務所で署名をするアポイントメントをとります。以下は、その際の注意です。

  • 公証人の認証では、ドイツ語原文をすべてその場で早口で読み上げられます。それを全て聞いて内容を理解したという確認の後に、署名をします。読めば内容は理解はできるドイツ語レベルであっても、早口に読まれる法律のドイツ語を即座に理解することは極めて難しいと思われます。そのため、ドイツ語がお出来のクライアントであっても、先にドラフトの段階で理解しておかれることをお勧めしております。
  • ドラフトで予習することは可能ですが、実際に署名するご当人がドイツ語を話せない場合には、通訳をつけることを要請されることがあります。しかも、法定翻訳資格をもっている方による通訳しか認められないことがあるので、人選の段階で予め公証人と相談しておくべきです。

以上、ドイツの会社設立における公証人の役割をご説明しました。
ご不明の場合はお問い合わせください。